区民とつくる地場演劇の会

これまでの公演

 

第1回公演 『やげんざか往来』

作・江角英明  演出・小林 裕  1990年3月23日〜25日 大田区民プラザ大ホール

 幕末、塾の師匠七郎の先祖が関わった事件とは――四代将軍家綱の頃、2年続きの凶作に新井宿村の百姓代表6名は年貢の減免を願い出るが音沙汰なく、もはや将軍への直訴しかないと、ひそかに江戸へ発つ。しかし事は果たせず無残な遺骸となって村へ帰る――
 都内唯一の直訴事件といわれる新井宿六義民事件の全容に正面から取り組んだ、重層的な本格時代劇。地域の歴史を地域民の手で舞台化したいという夢が、大田区まで巻き込んだ大イベントとなった。アマチュア31名プロ俳優14名の大所帯で1年がかりの成果に2千人がつめかけ、感動の声と演劇的にも水準が高いとの評を得た。

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第2回公演 『この子たちの夏』

構成・木村光一  1991年7月21日  大田区民プラザ小ホール

 旗揚げ公演に参加した女性たちが地人会の呼びかけに応えて上演した朗読劇。広島や長崎での原爆体験から、母と子の手記等を構成して静かな悲しみと怒りを投げかける名作。

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第3回公演 『大田の昔がたり』

作・野村昇司、江角英明他  1991年11月17日  大田区民プラザ小ホール

 芝居はやみつきになりそうだが背のびしないで楽しくとの思いで、昔語りなどを構成した寄席気分のプログラム。地域に根ざした演劇活動を続けようという気持ちが固まってきた頃。

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第4回公演 『たま川さらさら日記』

作・江角英明 演出・熊谷 章、江角英明  1993年3月20日・21日 大田区民プラザ大ホール

 昭和20年9月、アメリカ軍に48時間以内の強制退去を命ぜられて大混乱の羽田の土手で、仮祝言をあげる若い二人がいた。47年後、同じ場所に立つ老人は、赤ん坊を産んですぐ行方不明になった妻を探すあの時の夫。妻の行方を追って川をさかのぼると、そこには奥多摩村民3千人が追われた末にようやく完成した小河内ダムがあった――多摩川の上流と河口を結ぶふたつの住民の歴史を軸に、戦争の傷を負う人々や自然への思いを川の流れに託してロマンをこめて描く。楽器の生演奏や劇中劇のある変化に富む構成にメンバーの個性が生きた。

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第5回公演 『大田の昔がたりⅡ』

 作・野村昇司、江角英明他 演出 江角英明 1994年2月19日  大田区民プラザ小ホール

 六郷橋の下に住むホームレスの回想記、童話の中から時代の姿が見えるシリーズ、新田義興を奇想天外に料理した狂言がたり。「語り芝居」と名づけてまとめ、自分たちの町を身近に感じたという観客の声がうれしかった。

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第6回公演 『六つの魂と女房たちの話』

作/演出 江角英明  1995年3月5日  大田区民プラザ小ホール

 苦しい暮らしにあえぐ新井宿村の女たちは、死を賭して窮状を訴えて果たせぬまま囚われ切り捨てられた夫や父の無念の魂たちと、心をこめて呼びかけ合う。初回公演で扱った事件を、残された女たちの側から一夜の経過に凝縮して描き、小ホールらしい簡素で市場のある舞台。

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第7回公演 『炎の道から』

構成 江角英明  1995年8月5日  大田区民プラザ小ホール

 戦後50年目を機会に身近な戦争体験を掘りおこし、観客と共に戦争と平和を考える。おもに蒲田区と大森区の空襲や時代背景、外地での残虐行為をふりかえる兵士の内面など、すべて体験者の生の言葉を構成して朗読した。

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第8回公演 『炎の道から ’96』

構成 江角英明  1996年7月20日  大田区民プラザ小ホール

 前作の反響を受けてさらに新しい資料から地域の戦争体験、子供や親たちの姿、兵士の回想、原爆体験の手記などから、戦争の被害者でも加害者でもあった日本人の姿を見つめる。皆で資料を探し、自分や肉親の体験を記録するなど、実感をもって語ることの大切さを学ぶ。

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第9回公演 『呑川かっぱ夜話』

作 江角英明  演出 熊谷 章  1997年6月7日〜8日  大田区民プラザ大ホール

 紙芝居を語る老先生に、むかし呑川に棲んでいた河童の息子が父の腕をとり返しに来るとの手紙がきて町中大騒ぎ。いよいよ夜更けに訪れた2匹の河童は、人間に汚され危機に瀕している地球を救う重大なメッセージを残して雷鳴と共に去っていく。 ―――― 清い水にしか棲めない生きものが都会に現れるという意外な展開に、生き生きとした町の人々、大マジメな河童の立ち回りや悲恋、唄や踊りなど、年齢や個性の幅が広い会の特性をいかした芝居づくり。仕事や家庭をぬっての厳しい稽古だったが、スケールの大きい、幻想的で楽しい舞台と大好評。

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第10回公演 『炎の道から ー泣き畑』

作/演出  江角英明   1998年7月20日  大田区民プラザ小ホール

 公園に集まった4人は富山へ学童疎開した仲間、50年ぶりに同窓会を計画するが当時の複雑な想いが交錯する。大田区23,000人の児童が体験した集団疎開の実態、教師や親の苦悩、子供達の心の傷など、現代に通じる問題を浮き彫りにして、幅広い世代から共感が寄せられた。

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第11回公演 『磐清水恋甘辛・蒲田太平記』

作/演出  江角英明   1999年2月13日〜14日  大田区民ホールアプリコ小ホール

 大森海苔問屋の若旦那の横恋慕に一計を案じるばあやの薬が効きすぎた話。戦国の武将新田義興が供をつれて愛人を訪ねるが追い返される羽目になる狂言。講談や地謡、狂言様式を取り入れて、女の知恵と迫力にたじたじの男たちに、こけら落しのホールには笑いが満ちた。

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第12回公演 『炎の道から ー梁川家の午後』

作/演出  江角英明   2000年7月8日〜9日  大田区民プラザ小ホール

 昭和8年、「死なう!死なう!」と叫んで行進し捕らえられた、日蓮を信奉する集団があった。羽田に近い糀谷で生まれ純粋な主張で信者を増やし、十数年を破滅へと駆け抜けた人々と大戦前夜の不安な時代を、ある家族のひとときに織り込んだ家庭劇。20世紀の最後に、忘れられない重い事実をさわやかな一幕にまとめた。

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第13回公演 『六花ふるふる ー新井宿義民伝異聞』

作/演出  江角英明   2001年12月8日〜9日  大田区民プラザ大ホール

 新井宿義民六人衆の劇化第三作。元禄五年、自分の出生の秘密をたずねて多摩川の上流からやってきた少年が、村に住む男に導かれて15年前の事件の姿を知るうちに、死を賭して立ち上がった6人とのかかわりにたどり着く。悲惨な事件によって人々は救われたのか、何が変わったのか……。「ろくにんものー」と呼ぶ村人の声や鎮魂の子守唄が観る者の心に深くひびき、現代を問う舞台となる。地域のテーマを息長くみつめて奥行きのある胸を打つ舞台と評され、市民21名と客演俳優7名が一体となった8ヶ月の努力が実った。

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第14回公演 『羽田たいへん記』

作/演出  江角英明   2002年11月16日〜17日  大田区民プラザ小ホール

 敗戦直後、米軍の退去命令で無人となった羽田の町で、行方不明になった祭神トヨウケ姫を探す穴守稲荷の狐たち、それを追う巡査たち、そこへ古代の神々も現れて……。幻想と史実を古典の味つけで自在に行き来する地場狂言第2弾は、その真情と楽しさ可笑しさで大好評。

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第15回公演 『六郷橋』

作/演出  江角英明   2003年11月22日〜23日  大田区民プラザ小ホール

 明治7年、私財を投げうって多摩川下流に186年ぶりに、ついに橋をかけた鈴木左内。時代の大きな転換期に生きた男の成功と挫折を通して、私たちの未来へも目を向ける。お囃子や語りも入って劇的な起伏に富み、小さなホールが密度濃く拡がった舞台。

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第16回公演 『てんで昔ちっと昔』

作 江角英明ほか  演出 えすみ友子 長沢和彦  2004年11月14日  大田文化の森ホール

 公演3ヶ月前に江角が亡くなるという不幸を乗り越えて、病中に書いた短編とこれまでに人気の小品を上演。「昔の物語を通して、自分たちの今を表現する」という故人のめざした舞台づくりに皆で懸命にとりくみ、追悼の思いをこめた。

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第17回公演 『炎の道から ーそして、60年』

構成/演出  えすみ友子  2005年12月3日〜4日  大田区民プラザ小ホール

 戦後60年の節目にふたたび身近な戦争体験に向き合い、私たちの今とこれからを考える。この10年の間さらに切実になってきた世界中の戦争、紛争にもふれながら、ひとの痛みや苦しみを想像してみよう、と呼びかける朗読劇。

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第18回公演 『山わろ ー呑川へきたかっぱのことー』

作 江角英明  演出 熊谷 章  2007年10月20日  大田文化の森ホール

 1997年に書かれたメルヘンの小品を舞台化。大田区の小さな川に多摩川の奥から2匹のかっぱが危険を冒して泳いできたのは、母の遺言をかなえるためだった。詩情の中に人間とのふれあいや家族愛を描き、きれいな川を取り戻して、と訴える。

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第19回公演 『蒲田太平記』『羽田たいへん記』

作 江角英明  演出 眞船道朗  2009年12月5日~6日  大田区民プラザ大ホール

 かつて好評だった狂言仕立ての喜劇2本立て。ホールに能舞台を組み狂言師の指導のもとに、設立25周年にふさわしい華やかな公演となった。

 戦国武将、古代の神々も登場して男女の機微やすれ違い、戦争の傷跡や人々の暮らしを織り込んだ笑いの名作は、当会ならではの演目として観客も大喜びだった。

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第20回公演 『六つの魂と女たち ―千年のさきへ』

作 江角英明  構成・演出 えすみ友子  2012年2月26日  大田区民プラザ小ホール

 2011年3月の東日本大震災と原発事故に衝撃をうけて企画した、チャリティーを兼ねた公演。

 旗揚げ以来取り上げた新井宿六義民の名場面に、理不尽に土地を奪われ追われた人々の苦しみを重ねて構成し、演じる我々の思いと観客の共感が会場に満ちた。

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第21回公演 『山わろ、消えた』

作 江角英明・えすみ友子  演出 野崎美子  2015年7月4日・5日  大田区民プラザ大ホール

 1990年の旗揚げから25周年。いよいよ総力をあげて21本目の新作公演です!!

 『嘘のようなほんとの話か、本当のような嘘か…』

 この町で、私はふしぎな生き物に出会いました。この川で、私は人間に頼みごとをしました。

 

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